アーツ×アーツ

本好きでマンガ好きのジョン・スミスが書く、名著礼賛ブログです。

カテゴリ: 長編


彼女は一度も振り返らなかった。
-白夜行(東野圭吾)




読了目安:約9時間


どうも!


本日紹介するのは、累計発行部数200万部の大ベストセラー小説『白夜行』です。
東野圭吾の最高傑作として名高く、発売から二十年近く経った今でも、書店へ行けば必ず置いてある一冊です。


2006年のテレビドラマ化をきっかけに人気を獲得し、2011年には映画化も成されております。
絶世の美女が歩む悲劇の人生を、当代きっての美人女優が演じました。
こちらで記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。

映画版はこちら!



ただ、この本、文庫でも850ページを超える大作です。
しかも、多くの伏線や登場人物の交わりが描かれますので、読書慣れしていない人にしてみれば読了がなかなか大変です。


ですので本が苦手な人には、映画版を薦めます。
僕も観ましたが、話の流れや内容の味わいは映画版でも充分同じでありました。
ドラマ版は構成の組み換えが行われ、主人公の内面世界が描かれた分、より話が理解しやすい作りとなっております。

『白夜行』あらすじ
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂 - 暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。
(引用:Amazon)


ただただ悲しい。
悲しくて悲しくて、仕方のない物語です。


この物語の根底にあるものを挙げるとすれば、「絶望」、「アダルトチルドレン」、「献身」、このあたりになるのではないかと言えます。しかし、こんな簡単な単語で片付けられるほど、単純な物語ではありません。


この作品では、「父親を殺された」亮司と、「容疑者の娘」の雪穂、
二人の幼少期からの十九年の人生が、第三者の視点から描かれるというのが特徴です。
主人公二人の心理や主観の描写はほとんどなく、読者は、登場人物たちの目を通して描かれる二人の姿や伏線から、亮司や雪穂が何を思い、何を行ったのか読み解きます。


交わらずに生きていたように見えた、亮司と雪穂の関係。
魂を踏み躙られ、壊された二人が、隠すように持っていた、互いに対する純愛と慈しみ。


物語の最後、読み解かれる亮司の父親が殺された事件の背景にあった、あまりにも残酷で、醜悪で、最悪な真実に、読後は冷えた鉛を飲み込んだかのような気分になります。


この作品をきっかけに、僕の高校時代の愛読書はもっぱら東野圭吾となりました。
映画化されたときの雪穂役が、これまた僕の大好きな女優・堀北真希さんだと知った時、まさに理想の雪穂だと思ったのも懐かしいです(堀北真希さんの温度感のない話し方や立ち振る舞いが好きで、まさに雪穂がはまり役だと思ったのです。もう引退なさってしまいましたが、十数年来変わらず今でも一番好きな女優さんです)。


機会があれば、東野圭吾氏の別作品も御紹介できればと思っております。
楽しい本、まだまだたくさんありますから!


ではまた!



むかしむかしあるところに
なまえのないかいぶつがいました
―浦沢直樹『MONSTER』




読了目安:約6時間



どうも!


浦沢直樹氏と言えば、ヒットメーカーの漫画家として超有名です。
柔道マンガの『YAWARA!』(女子柔道家のあだ名である「やわらちゃん」の元ネタ!)や、三部作の邦画が大ヒットした『二十世紀少年』(女優・平愛梨さんの出世作!)の原作者として知られております。

今回紹介するのは、そんな浦沢直樹氏の名作『MONSTER』です。
全十八巻の漫画作品です。


結論から申し上げます。
この作品、めっっっっっちゃおもしろい!。


概要・あらすじはこちら!

『MONSTER』概要・あらすじ
 ドイツ、チェコを舞台とした本格ミステリー漫画。冤罪、猟奇殺人、医療倫理、病院内での権力闘争、家族の在り方(親子愛、兄弟愛)、人間愛、児童虐待、アダルトチルドレン、トラウマ、東西冷戦構造、ベルリンの壁崩壊の以前以後のドイツ社会などをテーマとしている。

1986年、天才的な技術を持つ日本人脳外科医・Dr.テンマは、ハイネマン院長の娘エヴァと婚約し、ゆくゆくは外科部長から院長という出世コースを掴みかけていた。 そんなある日、西ドイツ(当時)・デュッセルドルフのアイスラー記念病院に、頭部を銃で撃たれた重傷の少年ヨハンが搬送されてくる。Dr.テンマは、院長の命令を無視してオペを執刀し、ヨハンの命を救う。
1995年、外科部長となり職務に励んでいたテンマの前に、美しい青年に成長したヨハンが現れる。テンマの患者ユンケルスを目の前で何の躊躇もなく射殺し、過去の殺人を告白するヨハン。殺人鬼を蘇らせてしまったと自らの責任を感じたテンマは、怪物ヨハンを射殺するために、ヨハンの双子の妹アンナに再会することを企てる。殺人犯の濡れ衣を着せられ、キレ者のルンゲ警部に目をつけられたテンマは、ドイツ国内を逃亡しながらヨハンを追跡する。
(引用:Wikipedia)


天才的な外科技術と、人に愛される優しい心根を持ったテンマは、ヨハンの犯した殺人の重要参考人としてドイツ中から追われる身となります。一巻で登場した時点では柔和で小綺麗な優男だったのが、巻を重ねるごとにどんどんワイルドになっていきます。周りに対してはとても優しくて物腰の柔らかいテンマが修羅場を幾つも乗り越えてセクシーになっていく姿はカッコいいですね。僕は男ですけど、テンマかっけー!なんて、子供みたいなことを思いながら読んでました。テンマを思わず応援したくなる作品なんですよ。



これが、

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※『MONSTER』(浦沢直樹)1巻より



こうなります。

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※『MONSTER』(浦沢直樹)14巻より



メスより銃が似合う男に変貌していますね。




幕間に描かれる、サブキャラクターのエピソードもまた印象深いです。


親を殺した傭兵と生きる笑わない少女。

息子の逮捕をきっかけに退官した元警察官。

診療所を営むもぐりの医者の女の子。

死に際のテロリスト。

甘党の心優しい元殺し屋。



こういったエピソードがたまらないんですよね。

人情的というか、心に沁みるというか。

無くてもこの作品は十分面白いんですけど、やっぱりあった方が厚みが出て面白い。




そして、この作品は前半と後半で趣が異なる作品です。


前半では、ヨハンという人殺しを追う作品であるのに対して、後半は、ヨハンがなぜそのような人格を備えるに至ったかを暴く作品となります。


ヨハンもまた、より大きな闇に人生を変えられた人間だったんです。



表題の「MONSTER」が、壮大な伏線であり、ミスリードです。

本当の「MONSTER」は誰なのか。

最後の最後で分かります。




ではまた!



「宗教教育がない!それではあなたがたはどのようにして道徳教育を授けるのですか」
私は愕然とし、すぐに答えることができなかった。
-新渡戸稲造『武士道』



どうも!

日本人のモラルはどのように保たれているのか。
それは武士道によってであると新渡戸稲造は考えました。

僕、『武士道』を読んで、その理想像に心が打たれまくってしまいました。
ここでは紹介しきれないくらいに感銘を受けた記述が沢山あって、それ以上に思索を巡らせたことが沢山あります。

一時期、この本を肌身離さず持ち歩いていたことがあって、そのせいで文庫の本が今はボロッちくなってしまいました。
『武士道』概要
『武士道』においては、外国人の妻にもわかるように文化における花の違いに触れたり19世紀末の哲学や科学的思考を用いたりしながら、日本人は日本社会という枠の中でどのように生きたのかを説明している。
島国の自然がどのようなもので日本独特の四季の移り変わりなどから影響を及ぼされた結果、日本人の精神的な土壌が武士の生活態度や信条というモデルケースから醸成された過程を分かりやすい構成と言葉で読者に伝えている。
例えば、武士や多くの日本人は、自慢や傲慢を嫌い忠義を信条としたことに触れ、家族や身内のことでさえも愚妻や愚弟と呼ぶが、これらは自分自身と同一の存在として相手に対する謙譲の心の現れであって、この機微は外国人には理解できないものであろう、といったことを述べている。
しかしこれは新渡戸独特の考えであり、彼の思想を批判する書も出されている。
(Wikipedia)

僕は本書で述べられる「知行合一」に対する武士の真摯な姿勢に、心打たれました。知行合一を平たく言うと、思想と行いは同じくしなければならないという事です。元々は陽明学の思想ですね。

「読書で知識を貯めるだけで、実践しない人間は軽蔑された。」なんて、本書の一部をかいつまんだ一文ですが、耳が痛いですね。ザクリと刺さりました。

義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義。七つに分けて武士の在り方を論じますが、どの章も目から鱗が落ちて大いに感銘を受けます。
僕はこの本に、数ページごとに大切な一文が書いてあることを示す折り目を入れております。全部で80箇所くらいですかね。こんなにチェックを付ける本は、武士道と他数冊くらいかなぁ。

カッコいい人って、きっと、武士道が示す生き方を実践している人なんです。
そして僕は、そんな男にある種の信仰を持ってるんです。

ではまた!



悪徳におちいったからって、それが何なのさ、かまうことはないじゃないの!
-サド『閨房哲学』



***危険書です。自己責任でお読みください。***

どうも!

『閨房哲学』は見慣れない漢字ですが、これで『けいぼうてつがく』と読みます。

著者のマルキ・ド・サドは、フランス大革命の時代を生きた小説家です。「サディズム」の語源は彼の名前から来ているといわれていますが、その理由は、彼が性的倒錯をテーマに多くの作品を残したからです。

要するに、「引くほどの狂った性癖を持ってた」ってこと。

中でも『閨房哲学』は、彼の反社会的思想や性に対する歪んだ考え方が高密度に濃縮された、超・超・超危険書です。

時のフランス政府から発禁処分を受けてますし、サド自身も人生の半分を精神病棟と監獄の中で過ごしました。

『閨房哲学』概要
15歳の少女ウージェニーと、姉弟で交合するサン・タンジュ夫人、放蕩生活者のドルマンセとの情欲を賛美する対話を軸に展開され、無神論、不倫、近親相姦の肯定などが書かれている。小説の形式が取られているが、登場人物が台詞で自らの思想を長文で論理的に解説する部分に紙面が割かれている。
(Wikipedia)

革命期という激動の時代にあっても異端視された思想と作品だけあって、中身は蠱惑的なエネルギーに満ちております。

倫理はなぜ守られるべきなのか。

ある種答えのない難題に、自らの欲望を第一にするという姿勢で考えることで一種の答えににじり寄っているように思うのです。

分別の付く年齢になったら読んでくださいね。

ではまた!


僕の胸の底には、見かけを超えた悲しみがあるのです!
―シェイクスピア『ハムレット』




どうも!

『ハムレット』といえば、シェイクスピア四大悲劇のうちの一つとして有名です。

タイトルのハムレットとは主人公である王子の名前であり、悲劇の名に恥じぬ誰も幸せにならないストーリーとなってます。

『ハムレット』あらすじ
 デンマーク王が急死する。王の弟クローディアスは王妃と結婚し、跡を継いでデンマーク王の座に就く。父王の死と母の早い再婚とで憂いに沈む王子ハムレットは、従臣から父の亡霊が夜な夜なエルシノアの城壁に現れるという話を聞き、自らも確かめる。亡霊に会ったハムレットは、実は父の死はクローディアスによる毒殺だったと告げられる。
(Wikipediaより)

父を殺し、母を奪った憎き叔父を殺すため、復讐の炎に燃えるハムレット。

狂人を演じることで周囲を欺き、その後の人生のすべてを復讐のために注ぎます。

父がクローディアス(ハムレットから見た叔父)に暗殺されたことは、ハムレットしかおりませんでした。

ハムレットには友人も、ガールフレンドもいました。しかし彼らにも真意を告げることはなく、彼らに冷淡な態度・言動を取り続けます。友人もガールフレンドも、ハムレットの行動に起因して命を落とします。それでもなお、ハムレットは復讐を成すために生きるのです。

最後、ハムレットは憎きクローディアスを打ち取ると同時に息絶えます。
すべてを投げ打って復讐を成したハムレットの胸中はどんなものだったのでしょうか。

父の敵を討つためだけに生きたハムレットは、息を引き取る最後の瞬間、幸せになれたのでしょうか?

父の死の真相を知ってから、それを知らぬ振りをすることも許すこともできず、ただただ苦しんだのかもしれません。復讐のために生きることが、そんな悲しみを癒すただ一つの手段だったのかもしれません。

 時代を超えて愛される『ハムレット』、ぜひともご一読ください。

ではまた!

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