アーツ×アーツ

本好きでマンガ好きのジョン・スミスが書く、名著礼賛ブログです。

カテゴリ: ドイツ


知識発生の最初の兆候は、死に対する希求である。
-カフカ『罪・苦痛・希望・及び真実の道についての研究』




どうも!

『変身』で有名なカフカの別作品です。

読んでから知ったのですが、本作は思想書のような作品でした。

分かる部分もあればわからない部分もあり、果たしてカフカがどれだけ考察を深めていたのか、読めば読むほど想像が膨らみます。

気になった箇所をいくつか抜粋します。


「すべての、人間の過失は、性急といふ事だ」

「ある点から先へ進むと、もはや、後戻りといふことがないようになる。それこそ、到達されなければならない点なのだ。」

「悪魔の用いる最も有効な誘惑術の一つは争いへの挑戦である。」

「人間が、たとへば、一個の林檎について抱き得る観念の多様性。」



何かに挑戦したときから、カフカは、もう「戻れない」と言っております。
「挑戦」は悪魔の誘惑であり、女性との闘いに似ているからです。
僭越ながら、そのたとえはとてもしっくりと感じられました。

しかし一方、急ぎ過ぎること(性急)にも警鐘を鳴らしております。

「挑戦」に酔いしれながらも、酔いに任せて到達を急いではいけない。と、読むことができます。

「継続」について、発展の決定的な瞬間である、とも述べています。


「挑戦」に身を投じても、「性急」にならず、「継続」を意識する。


なんか、そういうことが苦手な私は、読んでいて怒られているかのような気持ちになります。
溜息をつきたい。


ではまた!


そこでみんなは、沈黙したまま、悲しげに彼をじっと見つめた。
-カフカ『変身』




どうも!

ある朝起きたら虫になっている。
突拍子もない設定で知られるカフカの代表作『変身』が描くのは、「普通」な家族が苦悩していくその姿です。

『変身』あらすじ
布地の販売員をしている青年グレーゴル・ザムザは、ある朝自室のベッドで目覚めると、自分が巨大な毒虫になってしまっていることに気が付く。
(Wikipedia)

『変身』の主人公は虫となったグレーゴルでありますが、グレーゴルに共感する人は少なくないのではないでしょうか。

グレーゴルは辛い仕事も懸命に頑張り、借金を抱える一家を支える大黒柱でした。

それが突然、脈略もなく虫となってしまい、家族に依存することでしか生きることが出来なくなってしまうのです。

動作を気持ち悪がられ、何を考えているのか理解されなくなり、事務的に生かされ、軽視されてしまう。

虫になるという理不尽の許容は誰にも出来ず、とはいえそれは嘘でもなく圧倒的な現実であるという事実。


グレゴールは最後、家族から世話を放棄され、ひっそりと息絶えます。

亡骸はお手伝いの手により捨てられ、家族はグレゴールという枷から解き放たれた未来に思いを馳せて物語は終わります。

グレーゴルに生かされていた家族は、虫となったグレーゴルを支えることで生きる力を取り戻し、最後グレーゴルを殺すことで重りを捨てさり、より良い将来を手に入れます。

グレーゴルは「家族だから家族を愛した」けれど、家族は「養ってくれるからグレーゴルを愛した」のでしょうか。

この悲劇は、互いの愛の由来が全くの別物だからこそのものであるように思いますが、少し卑屈な面を持っているように見えるグレーゴルも、卑屈故にそれに気づいていた気がします。


「虫」になるという理不尽は、ある日突然訪れました。

自分が「虫」になった時、グレーゴルのように打ち捨てられないと誰が断言できるでしょう。

ではまた!

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