アーツ×アーツ

本好きでマンガ好きのジョン・スミスが書く、名著礼賛ブログです。


ああ寒いほど独りぼっちだ!
-井伏鱒二『山椒魚』






井伏鱒二といえば、『山椒魚(サンショウウオ)』だろう。ということで、読んでみました!

好きな漫画に名前が出てきたものですから、それ以来少し記憶のスミに残っていたのです。

長いこと「題名だけは知っている小説」だったので、今回読んでみてスッキリです。
「短編なんだ」「サンショウウオが擬人化されてるんだ」なんて、ご存知の方にしてみれば今更なことにいちいち唸りながら読んじまいました。

山椒魚(あらすじ)
谷川の岩屋をねぐらにしていた山椒魚は、あるとき自分が岩屋の外に出られなくなっていることに気がつく。二年の間岩屋で過ごしているうちに体が大きくなり、頭が出入り口に「コロップの栓」のようにつかえるようになってしまったのである。ろくに動き回ることもできない狭い岩屋のなかで山椒魚は虚勢を張るが、外に出て行くための方途は何もない。彼は出入り口から外の谷川を眺め、目高の群れが先頭の動きにあわせてよろめいているのを見て嘲笑し、渦に巻き込まれて沈んでいく白い花弁をみて「目がくらみそうだ」とつぶやく。
(Wikipedia)

引用したWikipediaにはもっと詳しく長いあらすじが書かれているのですが、とりあえずこんなもんで。

要するに、主人公(「人」ではないけれど)のサンショウウオが、成長しすぎたせいで狭い住処から出られなくなってしまい、どうしようもないと悟ってから、だんだんとひねくれた性格になっていく。って話です。

この話、なんだか「あるあるネタ」みたいな感じです。

自分の力ではどうしようもない圧倒的な現実の前で、虚勢を張り、悪態をつき、周りに不幸を振りまいたりして、それでも何も変わらない。

サンショウウオは紛れもなく不幸なんですけど、だからといってそれから状況が好転するわけでもなく、それ以上悪くなるわけでもなく、ただ「時間だけが流れている」って感じの雰囲気がたまらなく好きなんです。

こういう、雰囲気を読むような話が、自分は好きになる傾向があるかな?なんて、読んで思いました。

ではまた!


彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、その時の彼を思い出すことがある。
-芥川龍之介『トロッコ』




どうも!

少年の頃、たった一度だけの冒険が、年を重ねることでかけがえのない思い出になることがあります。

両親の手を少しだけ離れ、ちょっと遠出の大冒険。
そんな少年少女の時を、皆さんは覚えていますか?

『トロッコ』は、そんな子供の頃を思い出させてくれる、ノスタルジックな短編作品です。
『トロッコ』あらすじ
小田原・熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まった。8歳の良平が、その工事現場で使う土砂運搬用のトロッコに非常に興味をもっていた。ある日、トロッコを運搬している土工と一緒に、トロッコを押すことになった。良平は最初は有頂天だが、だんだん帰りが不安になった。途中で土工に、遅くなったから帰るようにいわれて、良平は一人暗い坂道を「命さえ助かれば」と思いながら駆け抜けた。
(Wikipedia)

物語の内容としては、洋画の名作『スタンド・バイ・ミー』に近い雰囲気です。子供が大人の世界を垣間見て感じる興奮や不安に、どこかへ行って帰れないのではないかという恐怖が混ざります。

誰もが経験した、新しい世界へ踏み込む際の独特な心持ちを、もう一度思い出させてくれる名文です。

ちなみに僕のはじめての冒険は、小学校に入る前、5歳の頃です。
主人公の良平とは違い、父を誘って、だったんですけど。

家の近くの丘を長い時間かけて登り、一面の花畑を目にしました。

今はもうその場所は、ツタと雑草だらけのジャングルみたいになってます。

不思議なもので、その頃の匂いも、辛さも、音も、景色も、何年も昔の事なのに、未だに思い出せるんですよねぇ。


ではまた!



二人は愚かなことに、家の最もすばらしい宝物を互いのために台無しにしてしまったのです。
しかしながら、贈り物をするすべての人の中で、この二人が最も賢明だったのです。
-ヘンリー『賢者の贈り物』




どうも!

愛する相手へプレゼントを贈るため、自分の最も大切なものを売りに出す。
しかしそれを夫婦がお互いにやってしまったら?

それが『賢者の贈り物』の描く悲喜劇です。

『賢者の贈り物』あらすじ
貧しい夫妻が相手にクリスマスプレゼントを買うお金を工面しようとする。
妻のデラは、夫のジムが祖父と父から受け継いで大切にしている金の懐中時計を吊るす鎖を買うために、自慢の髪を当時あった髪の毛を売る商人の元でバッサリ切り落とし、売ってしまう。
 一方、夫のジムはデラが欲しがっていた鼈甲の櫛を買うために、自慢の懐中時計を質に入れていた。
物語の結末で、この一見愚かな行き違いは、しかし、最も賢明な行為であったと結ばれている。
(Wikipedia)

なんか、すっっごく良い話だな。っていうのがまず初めの感想です。

二人にとっては、互いの贈り物が意味なきものになってしまったわけですが、それが何だというのでしょう。

それ以上、はるかに価値のあるものを感じられたじゃありませんか!

著者のヘンリーはこういう綺麗なオチがつく短編が得意で、ほかにも数々の名作を残しております。

いわゆる文学的な作品って、なんだか格調が高くて読後感もモヤモヤして終わることがありますが、ヘンリーは短くて簡単で、オチがつくのですごくわかりやすいですね。

ショートショートの巨匠である星新一を思い出します。

星新一ファンなら、ぜひヘンリーも!

ではまた!


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