アーツ×アーツ

本好きでマンガ好きのジョン・スミスが書く、名著礼賛ブログです。

何故貴方は、もっと素直に愛することが出来ないの
―石原慎太郎『太陽の季節』






どうも!

芥川賞を取った『太陽の季節』を、今更ながら読みました。

僕、この本好きです。


大人でも子供でもない、10代後半の時期って、やり場のない孤独感を内に秘めてませんでしたか?

何かが大きく間違っているのだけれど、それがいったい何なのか、どこから来ているのか、どうすれば正しいのか、わからないままただ快楽に溺れる。
『太陽の季節』あらすじ
 高校生・津川竜哉はバスケット部からボクシング部に転部し、ボクシングに熱中しながら部の仲間とタバコ・酒・バクチ・女遊び・喧嘩の自堕落な生活をしている。街でナンパした少女の英子と肉体関係を結び、英子は次第に竜哉に惹かれていく。だが竜哉は英子に付き纏われるのに嫌気がさし、英子に関心を示した兄・道久に彼女を5千円で売りつける。
(Wikipedia)

主人公の竜哉は今まで、出会った女性に対して特別な感情を抱くことがなかったのですが、自分には図れない人間性を備えた英子と出会い、少しばかり愛情や嫉妬といった人間味のある感情が自分の中に生まれることを自覚します。

しかし皮肉なことに、英子が竜哉に惹かれることで、竜哉は英子に興味を失います。

英子の愛情を試す竜哉の言動や行動からは、大切なものを慈しめない悲しさが漂います。
竜哉の行いは絶対的に間違っています。しかし、竜哉を絶対的な悪だと断定することはなんだかできません。
少なからず、共鳴してしまうんです。

竜哉には、悪友もいましたが、あくまで利害が先に来る関係性でした。
心から分かり合える相手は、竜哉にはいなかったのかもしれません。

愛が分からない。愛の築き方もわからない。
物質的に豊かなはずなのに、どうしても満たされない。満たし方もわからない。

10代後半の、生々しい感性を描いた名文です。


ではまた!

私にはこの数年来一つの現象が起きているのだ。かつて私の目には曙のひかりのように明るい輝きを放っていた人生の出来事が、昨今の私にはすべて色あせたものに見えるのである。
-モーパッサン『ある自殺者の手記』




どうも!

自殺を考える理由は、マイナスな感情によるものであると思われるかもしれません。

しかし今回紹介する『ある自殺者の手記』では、幸福だからこそ満ち足りず、自殺をする姿が描かれます。


『ある自殺者の手記』あらすじ
水曜日から木曜日にかけての夜中、二発の銃声が夜の街に響いた。
は老人が自殺をした際のものであったが、その老人は「かなり楽な生活をしていた人で、幸福であるために必要であるために必要なものはすべて具わっていた」人であった。
なぜ自殺をしたのか不思議がられるが、老人が死の間際に書き綴った手記には、人生が収束に向かうが故の退屈と瓦解について書かれていた。

退屈で苦難の無い今後の人生を憂い、老人は自殺します。
自殺の理由は辛いからではなく、辛さを感じない代わりに幸福も感じない、感情が縮小していく絶望感からでした。


満たされ過ぎて辛いなど、なんてぜいたくな悩みであることか!

生きる目標や活力が無いと、最後は死を選びたくなるのでしょうか。

ではまた!



悪徳におちいったからって、それが何なのさ、かまうことはないじゃないの!
-サド『閨房哲学』



***危険書です。自己責任でお読みください。***

どうも!

『閨房哲学』は見慣れない漢字ですが、これで『けいぼうてつがく』と読みます。

著者のマルキ・ド・サドは、フランス大革命の時代を生きた小説家です。「サディズム」の語源は彼の名前から来ているといわれていますが、その理由は、彼が性的倒錯をテーマに多くの作品を残したからです。

要するに、「引くほどの狂った性癖を持ってた」ってこと。

中でも『閨房哲学』は、彼の反社会的思想や性に対する歪んだ考え方が高密度に濃縮された、超・超・超危険書です。

時のフランス政府から発禁処分を受けてますし、サド自身も人生の半分を精神病棟と監獄の中で過ごしました。

『閨房哲学』概要
15歳の少女ウージェニーと、姉弟で交合するサン・タンジュ夫人、放蕩生活者のドルマンセとの情欲を賛美する対話を軸に展開され、無神論、不倫、近親相姦の肯定などが書かれている。小説の形式が取られているが、登場人物が台詞で自らの思想を長文で論理的に解説する部分に紙面が割かれている。
(Wikipedia)

革命期という激動の時代にあっても異端視された思想と作品だけあって、中身は蠱惑的なエネルギーに満ちております。

倫理はなぜ守られるべきなのか。

ある種答えのない難題に、自らの欲望を第一にするという姿勢で考えることで一種の答えににじり寄っているように思うのです。

分別の付く年齢になったら読んでくださいね。

ではまた!

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